吹奏楽

2020年度吹奏楽コンクール課題曲 新インプレッション!

投稿日:2020年2月3日 更新日:

2020年度吹奏楽コンクールの課題曲のCDとスコアが届きました!

すぐに何回もリピートして聴いています!

聴いた感想と、スコアを見て感じた、演奏する際に気をつけるべき点や選曲の際に考えることなど書いていきます!

 

Contents

全体の印象

2020年度吹奏楽コンクール課題曲、まず全て聴いただけの感想は、最近の流行りでもある吹奏楽のオーケストレーションなのかなとパッと感じました。

それは、クラリネットとサックスを同じ動きにすることが多いということです。

クラリネットが無理に鳴らさなくてもちゃんとメロディーが聴こえるような工夫でもありますが、人数バランスとしても最近の吹奏楽はクラリネットが少なくなってきているからこそのオーケストレーションなのかなと感じました。

またどの曲も、すぐにピアニッシモになったり、ふっと間ができるような場面がありますね。

この「間」の取り方やピアニッシモにすぐに落としても音色が崩れないことが必須なのかなと思います。

吹奏楽器で難しいところですね!

 

全ての曲がプロの作曲家の方が書かれた曲。

それぞれの方々の想いや意図がある曲達です。

特に「吹奏楽コンクール」というところを意識して書かれていると私は感じました。

当たり前といえば当たり前なのですが、「吹奏楽コンクールとしての課題」を少しでも意識はして書いたと思っています。

それが音色だったり和声感であったり、無理のない範囲での音の使い方だったりです。

 

金管楽器は特に無理のない範囲の音が多く使われている印象です。

木管楽器も無理に音量を出さなければいけない箇所などが少なく感じます。

 

審査員によってそれぞれの聴き方は違ってくるので「点数を出すには」という観点ではお話しにくいですが、私が聴いてスコアを見て感じたことを1曲ずつ書いていきます。

指導者の方の参考になれば幸いです!

 

2020年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅰトイズ・パレード

題名のとおり、おもちゃが愉快に歌っているような明るく楽しいマーチとしたそうです。

 

Fdurで始まり途中トリオでB♭durが入ります。

この20小節のB♭durトリオと一瞬テンポが遅くなる部分が1番の難しい箇所ではないかと思います。

トリオでは1フレーズT.SaxとEuphだけがメロディーになります。

小編成でもこの2つの楽器が無い団体もあると思うので気をつけなければいけないところですね。

演奏した時もこの2つの楽器のバランスや音色がとても重要になってきます。

一瞬テンポが遅くなるところは40まで下がります。

そして最初のテンポの120まで戻るようにaccelが書かれていますが120よりも早くなってしまいそうな雰囲気ですね。

おそらくテンポ120よりも早くなってしまっても曲の流れとしては大丈夫だと感じますが、曲の最後までaccelをし続けないよう注意が必要です。

音符が詰まってきてしまったりするとせっかくの木管の16分音符が聴こえなくなってしまいますからね!

なによりマーチなのでテンポ感には注意です。

 

考えすぎてしまいそうなのがテーマのメロディーの形ですね。

1拍目の付点のリズムの形が審査ではいろいろ言われてしまいそうな気がしました!

 

明るく響くハーモニーが好きでマーチがやりたい吹奏楽団であれば課題曲Ⅰがよいのかなと感じました!

 

2020年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅱ龍潭譚

幻想的な日本の雰囲気漂う曲想ですね。

泉鏡花さんの小説、「龍潭譚」からインスピレーションを受けて作曲されたようです。

すぐに調べて読んでみましたが、小説を読み始めるとすぐにこの世界に引き込まれます。

言葉で見ると感じ方が変わるのでぜひ読んでみることをオススメします。

 

唯一の大編成で書かれた曲。

聴いている印象は大編成でなくても大丈夫じゃないか?と感じられるほどピアニッシモの音楽が強く感じられます。

ですが、書かれている楽器で演奏する意義は音色の部分で多くの楽器を必要としているのがスコアを見てとてもわかります。

オーケストレーションによってこの曲の雰囲気が創られているところも大きいです。

吹奏楽の柔らかい音、繊細な音が要求されていますね。

 

それぞれのソロの表現は重要ですが、全ての楽器に共通するのは「音の出だしと処理の仕方」をどれだけこだわってできるかだと思います。

特に打楽器にこだわりが見えるといいですね!

吹奏楽では適当に考えてしまいそうな部分です。

 

曲目解説で作曲者の方も書かれていますが、「間」や「余韻」のとりかたに注意ということ。

音楽的な「間」や「余韻」はとても難しいです!

テンポの変化も難しく、ほんの少しだけの変化が多いです。

流れるような音楽の中で作為的でないテンポ変化をつくり小説の世界や言葉を感じれるような音楽創りが必要です。

オーケストラのような流れを持って吹奏楽の音色を出す、そんなイメージでしょうか。

 

木管楽器は連符や16分音符の動きが流れるように、でもはっきりとしていないとズレて聴こえてしまいます。

金管楽器は低い音が多く使われているので音色が開いた音に聴こえてしまいがちです。

打楽器は楽器の選定から、マレットを選ぶことなどがとても重要になってきます。

 

指揮者の持っていき方でいろいろな解釈が聴けそうな曲ですね!

しっかり楽器が揃っていて音楽や小説の雰囲気が好きな団体、金管楽器よりも木管楽器のほうが多い団体は選んでみてもよいのでは?

 

2020年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅲ僕らのインベンション

宮川彬良さんが書いたこの曲、スコアの曲目解説は1番長く書かれています。

吹奏楽をやっている人にはとても有意義なことが書かれていると思います。

 

「調性音楽であるならばどんな音楽であろうとたったひとつの法則に支配されている」

「導音は主音に行きたがっている」「解決したがっている」というたったひとつの法則。

 

この理論を謳歌するような曲が作りたいとこの曲を作曲されたそうです。

音楽理論を調べることがまず大事になる曲ですね!

 

聴いた印象とスコアを見ての印象とだいたい同じでした。

どのパートも無理に鳴らさなくてもしっかりと聴こえて来るようなオーケストレーションで書かれています。

なので小人数でもしっかりと各パートが聴こえるようになっています。

逆に大人数だと音の形がぼやけることがありそうなので人数多い場合は注意したいところです。

 

調性の問題で吹奏楽では音程が取りにくいと感じる場合があるかもしれません。

シビアに考えすぎずに音を1つ1つムラ無く鳴らせるよう練習をしておくことが大事かなと思います。

鳴らない、鳴らしにくい音があるとその音は音程を調節することが難しくなり合わなくなってしまいますからね。

 

練習は木管だけ、金管だけ、打楽器だけと分奏練習がやりやすいのでなかなか人が集まりにくかったりする団体は他の課題曲と比べて計画立てて練習しやすいのではと感じました。

 

気をつけたいのはやはり音色ですね。

明るい響きを意識しすぎなくても調性で明るく響くように書かれています。

全ての楽器で明るい音を意識しすぎると音程も上がってきてしまうこともあります。

 

その人が持っているよい音を出せれば楽器が響いてくれるので無理に作為的に響きを作ったり音を作ったりしないほうがよいです。

これはどんな曲でも言えることですが、個人の音色が磨かれる曲だと思います。

 

打楽器は課題曲の中では1番楽しいと思える曲ではないでしょうか!

 

トロンボーンはメロディーが多く技術的に少し難しいと感じることもあるかもしれません。

オプションの楽器ではコントラバスがあると全体の音色が安定するのではないでしょうか。

チェロなども入れたいと思ってしまいます。

私は吹奏楽というよりもオーケストラのイメージで音が聴こえます!

 

全体としては楽しい雰囲気の曲なので笑顔で演奏できたらいいですね!

英語の題名には「NICE」と入っています。

でも邦題では入っていない…

こんなところを考えてみるのも面白いですね!

 

2020年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ吹奏楽のための「エール・マーチ」

今回の課題曲の中では単純に技術的な意味で難易度は1番低いと思います。

その分上手に聴かせることは1番難しいかもしれません。

吹奏楽だけでなく、音楽では音符が簡単なほど基本的なことがどれだけできているかがわかります。

 

課題曲ⅠとⅣでは、Ⅳのほうがマーチとして歩けるように演奏できます。

 

アメリカのマーチのような軽やかなマーチにはなりにくいでしょう。

トン、トン、と地面からすぐに足が離れて歩く様子ではなくザッ、ザッ、と地面をしっかりと踏んで歩くというイメージですね。

 

全体としては音圧が無いとしっかりと聴こえてこないかもしれません。

小人数でも音圧が薄くなりすぎないようにしたいですね。

大人数でやる場合は全体でまとまった音にしていかないとただうるさい、汚いと感じられるかもしれません。

(近年の吹奏楽はホールや場所に対して音量が大きすぎますよね…)

 

金管楽器よりも木管楽器がよく鳴る団体に合う曲ではないでしょうか。

金管が強いとバランスを取ることが難しそうです。

 

1番難しいのはスネアドラムです。

細かい音を1人でやり続けていますのでどうしても耳に入ってきますね。

会話しているように叩くか、厳格にキリッとしたように叩くか、どのような音、音楽を望むかで印象がガラっと変わります。

この曲の全てをスネアが持っていると感じてしまいました。

楽器もこだわって選びたいですね。

 

リズムで気をつけることとして、付点音符の捉え方と3連符と16分音符の違いというところは必ず気をつけるべきポイントです。

どんな曲でもそうなのですが、吹奏楽では音符を雑に扱う演奏というのがとても多く感じられます。

付点なのに3連符に聴こえるなどです。

2拍3連なども逆に付点音符に聴こえてしまったり。

この点は特に吹奏楽コンクールでは審査に影響すると考えられます。

しっかりと対策、練習したいところですね!

 

この課題曲Ⅳは中学生に多く演奏される曲と予想します。

おそらく消去法でこの曲になる学校さんが多いと思いますが、簡単だからこそ難しいことがあると認識しておいたほうがよいですね!

 

2020年度吹奏楽コンクール課題曲Ⅴ吹奏楽のための「幻想曲」-アルノルト・シェーンベルク讃

「現代曲」と言われるものは難しいだったりわからないといったことがすぐに連想される方は多いかもしれません。

ですが、例年の課題曲Ⅴに比べて今回の曲は比較的わかりやすいのでは?と私は感じました。

 

「幻想曲」とあるように何かの物質や物体を表現している曲ではないことが聴いて、スコアを見て理解できるかと思います。

 

曲目紹介で作曲者の方も書いていますが特に前半部分をしっかりと読み解くことが1つポイントです。

一見書いてあることが「?」となってしまいがちですが、説明がスコアの最初に書いてあったり楽譜上にもちゃんと書いてありますので「ちゃんと見る」ことが大事です。

前半部分のイメージをはっきりさせたり音符や動きをはっきりさせることができたなら後半部分は読むことは比較的楽になります。

 

前半勝負ですね。

幻想的な雰囲気をどれだけ出せるか、ずれることを恐れずに表現することがとても大事です。

私はこの前半部分を何回も聴いていると映画のワンシーンに使われているような映像が見えてくるような感覚になりました。

書いてあるテンポ指示どうりやろうとせず、曲の揺れとして、アゴーギグを書いたらこうなる、というような捉え方でよいと思います。

この曲も課題曲Ⅱと同様、オーケストラの流れで吹奏楽の音を出す、というイメージです。

 

フルート、ピッコロ、バスクラリネットが効果的に使われています。

この組み合わせはとても良い音がしますね!

それぞれが自由に歌いながらも統一性がある、そんな音楽ができたら引き込まれる演奏になるなと思います。

吹奏楽器ならではの息使いが聴かせどころ。

 

複雑な変拍子が使われていないことが吹奏楽で取り組みやすい点です。

指揮者は考えることが減って安心です^^

 

後半Alla marciaからはスネアドラムが全体をリードしていきます。

どのような音色が良いのかこだわりたいところですね。

前半と対照的に管楽器はカチッと決めて、音色なども変えていきたいところです。

前半は横なら後半は縦といった対比をしっかりと感じられると演奏効果が高くなります。

 

この曲は50人以上の吹奏楽団がやるのがベストです。

息の音など人数少ないと効果が薄くなってしまいます。

本当なら70人以上がいいのでは?と思ってしまいました!

 

課題曲Ⅴは他の課題曲と異質ですが、奏者が楽譜をしっかり見ることに繋がり音符を理解する勉強にもなります。

 

例年吹奏楽コンクールで課題曲Ⅴを選んだことが無い団体でも、取り組んでみてはいかがでしょうか?

 

まとめ

今回の2020年度吹奏楽コンクール課題曲の中で私がオススメしたい曲はⅢとⅤですね!

バンドの編成や事情を抜きにして吹奏楽コンクールという審査の観点を抜きにしてのお勧めです。

 

吹奏楽コンクール審査の好みで考えると…やはり中学生以外はⅤではないでしょうか。

中学生ではⅣは多くなると思います。

Ⅳが多い中、さわやかにⅢができていたり大人の雰囲気でⅡができていたりすると審査員には好印象だと思います。

 

2曲くらいに絞って練習して申し込みの時に決める形であれば、指導者も生徒も勉強にもなりレベルアップにも繋がります!

楽しんで練習してほしいなと思います!

 

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